サル@マガ

2008.09.02

鷲崎健

高円寺は純情商店街中程にその店はひっそりと建っている。

昼は魚屋、夕方以降は魚介類中心の飲み屋になるその店に通いだして、もうかれこれ2、3年になるだろうか。

大人になるということは、馴染みの飲み屋が出来るということだと漠然と思っていた。

大手チェーン居酒屋ではなく、出来ればカウンターと少しのテーブルだけしかない小さい小料理屋。

TVはない。BGMは大きくも小さくもなく、メニューもあまり代わり映えのしない定番と、その日のおすすめが2、3品目。

ういう店の常連になるのが夢だった。まあなんとも安っぽい夢ではあるのだが、男なら誰しも心に高倉健を持っていて、一人、内なる健さんと対話する場所を欲するものだ。

僕の場合は大抵仕事終わりに古本屋に立寄り、文庫本を一冊買ってからその店に向かう。

おすすめの刺身と焼き魚を一皿注文し、瓶ビールをちびちびと飲みながら本を読む。

一本飲み終わったら煮魚を一皿、それに弱めの焼酎を水割りで。2〜3杯飲んだらだんだん本の内容が頭に入らなくなってくるので、読みあたりはいいけど内容のあまり無い本を最初からチョイスしておくことが重要だ。

同じ行を何度も読み出したらその日は終了、お会計と相成る。この間約90分ほどだろうか。

家まで徒歩でそれ程かからないので、店で寝るのとそんなに変わらない時間に布団に入れる。

と、ここまでの行程は全男性陣の夢だと思っていたのだが、廻りに話してみたところ頗る評判が悪い。

何故だ。

家から近くて美味くて安くて店員があまり話しかけてこない飲み屋なんて最高じゃないか。

しかし問題は飲み屋では無く飲み方らしい。

曰く「一人で飲むなら家でのんだらいいじゃない」。

いや違う。

孤独とは演出の上に成り立つもの。一人暮らしとひとりぼっちは似て非なるものなのだ。

誰がなんと言おうと、これからもひとりぼっちで酒を飲んで行く所存である。

 

いや、飲み会も好きなんだけどね。

誰も誘ってくれないの。孤独だ…。

鷲崎健

 

 

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