株式会社アトミックモンキー

SARUMAGA

サル@マガ

  • サルの住処

伊福部崇

オフが苦手だ。 

嫌いじゃないけど、ただ苦手。

事前から予定を入れて、事務所にスケジュールNGを入れた休みなら、それに併せて、旅行に行ったり芝居を観に行ったりと予定が埋まっているので問題はないのだが急に出来た休みは本当に何をして良いのかわからない。

次の日が休みであることが判明した僕は「明日一日中、気兼ねなく遊ぼう!」と、その時に抱えている仕事をすべて片付ける事を決意。

 

帰宅後から台本等を書き始める。とはいえ、帰宅するのが既に12時過ぎだったりするので仕事を始めるのがだいたい1時くらいから。

毎週の通常台本を5本程度作り、ドラマ台本やらなんやらを片付け時計を観ると朝8時過ぎだったりする。

 

「おわったぁーーー!」

と、心地良い疲労感と眠気の中、ジャージ上下にボサボサの頭の僕は、玄関を出てコンビニへ。

 

白々と明ける新宿の街。

(自宅があるので)仕事に向かう真新しいスーツの新入社員と生ゴミをあさるカラスの群れに歓迎されながらコンビニで缶ビールと枝豆を買う。コンビニ袋を下げて帰宅する僕。反対方向に歩くスーツからは当然怪訝そうな目で見られる。

帰宅後、疲労で全くアルコールなんて受け付けない胃に無理矢理、ビールを流し込みつつ、DVDを鑑賞。

気がつくと、ソファーで眠っている……

 

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さて、つけっぱなしのTVから流れるのは「二時っチャオ!」。

恵さんの軽快なMCで目覚めた目やにだらけの僕。

寝てる間に、ビールの缶を蹴ってしまったのか床はびしょびしょ。昨日着てたTシャツでそれを拭いて、そのまま洗濯機に入れる。

とにかく起きて何かしようと、風呂を沸かしているうちに、また眠ってる。

 

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次に意識が戻ったときは、既に「スーパーJチャンネル」。

小宮悦子さんの軽快なトークで目覚める。少し温くなってしまった風呂につかり、気がつくと19時。

外は暗い。

昨日の疲れは残ったままだし、変な体勢で寝てるので体中が痛い。昨日、あんなに楽しみにしていた休みを満喫する熱い意気込みはどこへやらな気分。「ルミネtheよしもと」に行こうにも、もう夜の公演が始まっている。

この時点で「休日を楽しむ」という自分の中だけでの義務を完全に諦める。

電話でピザを注文し、またビールを無理矢理、体に流し込む。

「結局今日は何もしなかったなぁ……」と、再びベッドへ。

一日を終える。

 

僕の休みなんてのは大体こんな感じだった……

去年までは……

 

しかし、今年の僕は違う!

なんと、こんな怠惰な休日にも救いの神が現れたのだ!

その名も「バルト9」。(ここに来てやっと本題であると言う事実は非常に申し訳ない)

 

「バルト9」。新宿に出来た新しいシネコンである。その名の通り大小あわせ9つのシアターを持つ、新宿の新名所だ。

とにかく僕にとって何よりも嬉しいのは、どんな平日でもレイトショーをやっているという点である。僕がこれまで諦めていた「休日を楽しむの義務」もここなら果たすことが出来るのだ。

例えば、風呂を出て20時に「バルト9」へ到着。20時30分からの映画を鑑賞し、23時。

その後、23時30分からの上映作品を観るというスケジュールを組めば、諦めていた休日に2本も映画を観ることが出来る!

 

実際、僕はここで昼過ぎから深夜まで、実に5本の映画を観たこともある。まるで、貧乏な映画青年が名画座を回っているかのようなエピソードだ。

特に深夜の上映では毎週「気まぐれコレクション」という企画で、劇場スタッフが選んだ古かったり、マニアックだったりで、今、大スクリーンにかかることはあまりない作品を上映をしていたりしている。

それが、良い感じにツボに入るセレクションで

「ロスト・イン・ラマンチャ」

「未来世紀ブラジル」

「ドウィグ・アンド・アングリーインチ」

「最も危険な遊戯」

「スタンド・バイ・ミー」

「トップガン」

「トレイン・スポッティング」

などの良作を上映してくれている。

学生時代に一度観た映画を振り返ってみたり意外と観ていなかった名作を初めて見てみたり疲れた体にちょうど良い感じだ。

 

ちなみに、僕が初めて「バルト9」に行ったときの「気まぐれセレクション」は、

「私をスキーに連れてって」「銀河鉄道999」「タンポポ」 の3作品。

すべて20年近く前に一度以上観たことがあったが、ここでも3日連続で「バルト9」に通い、改めてすべてを観てしまった。

 

あまり大きなフォントではかけないが「気まぐれセレクション」の凄いところは、観客が殆どいないことだ。

平日の深夜に目やにをつけて映画を観るような人間は新宿にはあまりいないらしい。

「タンポポ」に至っては、広い劇場に僕、一人だった。まるでプライベートシアター。オープニングで役所広司が僕一人に向けて鑑賞マナーを注意してくれた。これは危篤状態の主婦が家族にチャーハンを作るほどのレアな体験だ。

この日、僕は全てに満足し、「バルト9」を出た。

それ以来、ここが、僕WALKERのトップ記事になった。

 

一時期は、ほぼ毎日のように通っていたが、最近は僕好みの上映作品がなかったりで、足を運ぶ機会も少し減ってしまってはいるが、それでもここが僕のお気に入りスポットのひとつであるのは間違いない。

なぜなら「バルト9」は、僕の休日を成立させてくれる唯一の場所だから。

 

今、公式HPをチェックしてみたところ現在上映している作品は「青春の蹉跌」

1974年に製作されたATGの低予算青春映画。

出演は萩原健一さん、桃井かおりさん。

なるほど……

このあと、久しぶりに行ってみようかと思う。

 

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